Winny関連ネタ

勾留理由開示が行われるらしいですね。
[ネタ元]「Winny開発者が出廷(ESPIO 野田敬生の最新レポート、活動案内ほか)」http://espio.air-nifty.com/espio/2004/05/winny_1.html

 明日18日午後4時30分から、京都地裁202号法廷において、Winny 開発者・金子勇氏にかかる勾留理由開示が行われる。
金子氏本人が出廷して意見陳述を行う。
 午後4時から「先着順」で傍聴券が配布される。並ぶのは202号法廷前ではなく101号法廷前の通路。101号法廷前で傍聴券が配られる。
 202号法廷の座席は44席で、最大15席程度が記者クラブに割り当てられる。

また、同氏発行メルマガ(http://www.emaga.com/info/xp010617.html)では、5月14日、金子氏の弁護団が開いた記者会見(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040514-00000059-kyt-l26)の開催状況が詳細に報告されてます。
 会見は午後4時から約30分、京都地裁司法記者クラブにて。会見者は桂充弘弁護士(団長。大阪弁護士会)、壇俊光弁護士(大阪弁護士会)、白浜徹朗弁護士(京都弁護士会)の3名だそうです。

■壇弁護士
 弁護団は現在10名で構成している。刑事分野やハイテク分野に強い弁護士が集まっている。逮捕・勾留に疑問を感じ、それに対して正当な権利を行使すべきである、弁護活動すべきである、という観点から今回の結成となった。

■白浜弁護士
 現在、勾留に対する準抗告、および勾留理由開示請求を予定している。公判の時期は18日の夕方になるものと思われる。裁判所との協議が出来ておらず、具体的な時間までははっきりしていない。
勾留がどういう理由に基づいて行われているのか明らかにしてほしいと裁判所に求める予定だ。
 Winny ついての金子氏の認識だが、彼は自分でもコンテンツを製作しており、コンテンツの保護が必要であるという認識を持っていた。著作権侵害の意図があってソフトを開発したというものではない。
 ソフトの特徴として匿名性があげられるが、これは暗号化と似ている。匿名性は「情報を隠せなくする」のを可能にする(筆者注:内部告発を保護するという意味かと思われる)。イラクの中でも使われている。特に情報統制されているような社会において非常に有用なソフトであるともいえる。
 暗号化の技術はそれが違法だとか言われることはないはずだ。匿名性という側面だけ捉えて、著作権違反の幇助行為とするのは論理の飛躍である。某マスコミは「包丁をつくったのではなしに、拳銃をつくった」としているが、一面的な見方だ。
 P2Pのソフトについては、総務省の平成15年度のIT政策大綱の中でも有用性について指摘がある。ソフト自体の価値は大きいものがあると思う。ソフト開発について、広く情報を公開して検証してもらうのは、ソフト業界では今までも行われている。Winny だけが犯罪性を問われるのは、非常におかしな傾向だと思う。

■桂弁護士
 本件の逮捕は、非常に不当だと言わざるを得ない。ひとつは、著作権法違反で逮捕している点。このことの持つ意味を考えて欲しい。著作権を守る一方、「創る」という側面を守る観点がまったく欠けている。日本が国際競争力を持って、こうした分野を進めていく必要性が高いのに、これを抑圧するのは、将来の競争力をまったく失くすんじゃないか、という危惧を持っている。
 いきなり逮捕・捜索という強制力を行使するのではなく、国民の代表である立法機関で調整を図るべきものである。警察がこうした部分に踏み込んでいくのは、創作活動に及ぼす影響が大きいと考えている。日本の将来にも大きなマイナス。
 速やかに釈放すべきであって、起訴すべきではない。一般的にも言えるが、逮捕・勾留する要件がまったく欠けている。
 金子氏自身、東大からきちんと仕事を得ている。法律の改正もせずに、そういった人物を逮捕・勾留する意味がどこにあるのか。警察側の対応はまったく間違っている。出しゃばったという言い方はおかしいかもしれないが、踏み込むべきでない部分に踏み込んでいると言ってよい。司法機関、警察や検察も含めて、日本の将来を考えた総合的で冷静な判断をしてほしい。

■白浜弁護士
 Winny はHPで公開されているものだ。情報は既に公開されていて、罪証隠滅のしようがない。こういう人を拘束して、まさに自白を取るだけのために捜査を行うということになっていると言わざるを得ない。そういった意味でもおかしい。

■桂弁護士
 創作活動をする方を捜査・逮捕をするのが、表現活動の大きな制約になっている。そういうことを警察機関がやっている。日本の将来を大きく左右するわけだから、いきなり捜査するのがいいのかどうか、大きな疑問を持っている。
 利用者による著作権上の問題があったとしても、別途法律を改正して対応すべき問題だろうと思う。それを無理して、今の状況の下で、まったく面識もない人に対して「幇助した」として逮捕するのは、今までの裁判でも事例がないのではないか。
 今後対応すべき問題だろうと思うが、刑法上の問題としても、こういったことが認められるとなると、おちおち発明もできないということになろうかと思う。
 まさに創作活動全般に対して抑制が入って来ている。萎縮効果は非常に大きかった。創作活動に対する萎縮を招いてしまったのは失敗だと思う。日本国内だけの問題ではなく、そういったソフトを世界的なレベルで作る競争をしている中にあって、日本の司法警察が取り締まることがどういう損失をもたらすのか。「幇助」というのは曖昧。微妙な問題に対して曖昧に取り締まるのはマイナスだ。この点を皆さんも正当に評価してほしい。10年後、20年後に日本の大きな損失になる。価値観をどう評価するのか、冷静に判断してほしい。幇助は要件が曖昧で、これで取り締りできるということ自体、危険を伴っていることを理解していただきたい。

■壇弁護士
 事件についての具体的な内容等については、進行中の事件のため差し控えさせていただきたい。
 ただし、挑発的な態度をとっていたという一部報道については、正犯の逮捕の後にHPをすみやかに閉鎖していることがほかの報道でも明らかだし、その後金子氏はWinny の開発は一切していない。
警察に対して反抗的な態度をとっているというのは誤った事実なので、この場で訂正したい。

■質疑応答
記者:「金子氏は著作権の保護が必要との意識があり、これを侵害する意図はなかった」というが、弁護団との接見の中でそういうことを言っているのか。
壇弁護士:そのとおり。

記者:警察の任意段階での取締で「デジタルコンテンツの現状に疑問を感じた。著作権侵害を蔓延させる意図があった」と言っているようだが、今もそうか。
白浜弁護士:それはほとんど誘導だ。そういった理由で調書を取りたいという意図がみえみえだ。金子氏はデータのアップデートはしていないし、アップロードした人とも接触がない。これをあえて意図的に自白させようとしているのが今の捜査の状況ではないかと思う。

記者:インターネットの掲示板に金子氏自身が書いていることも当局は参考にしているという。2ちゃんねるに実際に書いている内容について「間違っていた」「本心じゃない」などと言ってるのか。
壇弁護士:書き込んだ内容自体、金子氏自身のものかどうかは分からない。どういう根拠で警察が金子氏のものだと言っているかは分からない。2ちゃんねるで他人が金子氏の名を借りて語ることも十分可能だ。

記者:接見のなかで、「自分の書き込みではない」と言っているのか。
壇弁護士:捜査段階なので、具体的な供述についてコメントは差し控えたい。
桂弁護士:捜査機関がどういったものを捉えて言っているのか確認できていない。それに対して反証しようがないというのが現状だ。

記者:支援者はどういう方々か。
壇弁護士:有志だ。知り合いだとか、今回の逮捕に憤りを感じて支援をしたいと思っている面々だ。

記者:現段階で、支援者は何人ぐらいいるのか。
壇弁護士:口座開設後2日で170万円程度集まった。
桂弁護士:金子氏は非常に優秀な能力を持ったクリエーターだ。今回の件は、こうした人材を育てていくのか、ポンと叩くのか、といった「せめぎあい」だ。創造活動をする人を日本の財産として育てるのかどうか、せめぎあいをしているところだと思う。創作活動する人を日本の財産だと思うのか、既存の著作権だけを守るだけのために汲々とするのがいいのか、これは政策論だと思う。警察の一方的な判断だけで、これを駄目だとすることの影響は大きすぎる。

記者:優秀なクリエーターなのに、ソフトを開発したことを匿名にしているのはなぜか。
桂弁護士:匿名であることによって、いろんな活動を促進しているとも取れる。
白浜弁護士:フリーソフトの配布について、必ずしも本名を出して配布しているわけではない。必ずしも匿名で発表したことで特定の意図を感じるというのはナンセンスだ。

記者:デジタルコンテンツや著作権のあり方を変えていきたいという金子氏の考え方について、弁護団としてはどういう見解か。
白浜弁護士:著作権保護の将来がどうなるのかというのは、やはりインターネット社会が今後どうなるのかで変わってくるはずだから、個々の弁護団でも意見はそれぞれ異なる。それに統一見解がなければ金子氏を弁護できないということではない。というわけで、本件について統一見解はない。
桂弁護士:議論すべきことだとは思う。しかし、議論するまでもなく、警察が一方的、断定的に逮捕してしまった。国の将来を見据える決断なのに、警察が先走りして「あかんよ。これしか答えはないんだ」と言ってしまったのではないか。少なくとも私の見方はそうだ。日本の将来にとっては、非常にマイナスではないのかと私自身は思う。

記者:現在の弁護活動は、どのような状態か。
白浜弁護士:接見が主な弁護活動だ。細かいことは、せめぎあいの最中なので差し控えたい。

記者:掲示板が主たる証拠だという見立てがされている。これについては金子氏本人が書いたものではないということか。
壇弁護士:警察がどの発言を問題にしているのか、どうして本人の発言だと言えるのか、警察がどうしてそういうことを言うのか疑問だ。
桂弁護士:今回の事件は幇助に問うたわけだから。幇助したと言えるのかどうか。

記者:では掲示板での発言は、金子氏のものかどうかという認識はないということか。
壇弁護士:掲示板での書き込みの内容について、「これは言った」「これは言ってない」というのは今言うべきことではない。起訴されたら、公判で明らかにされるべきだということだ。金子氏本人が書いたものとは限らない。
桂弁護士:というか、分からない。どの発言を警察が問題にしているのか、弁護団に対して明らかにしていないし、反論しようがない
というのが現状だ。警察が問題にしているということ自体推測に過ぎないし、それもよく分からない。

記者:では、ソフトの使い方が悪いという認識なのか。
壇弁護士:悪用したとすれば、その人は悪いだろう。たとえその人らは有罪だったとしても、金子氏が有罪なのは心外だ。

記者:金子氏が悪用されることを前提として開発したと警察はみているが。
桂弁護士:それでは「包丁を作った人に罪を科す」と同じ論理だ。
Winny の説明記事をあなた方が書いただけでも、幇助に当たる可能性もあるだろう。

記者:警察は「故意性」について言っているのだが。
桂弁護士:故意だとしても、「内心思っていた」だけだったらどうするのか。とにかく幇助は要件があいまいだ。禁欲的であるべき警察が踏み込むことの影響は大きい。表現活動も含めて摘発される可能性もあるし、非常に怖いことだ。

記者:「影響が大きい」というのは、個別の事件に限ってのことか、それとも一般論なのか。
桂弁護士:個別も問題だが、前提として「逮捕すべきでない事柄に関して逮捕してしまった」という認識だ。創造活動に対する影響、クリエーターたちの仕事をどれだけ萎縮させるか。影響を考えているのか。既存の著作権との調整をどうするのかという問題はあるが、それは警察が判断する問題ではない。国民が判断するものだろう。

記者:「立法段階で調整するべき問題」とは、具体的には何を指すのか。
壇弁護士:コピーのキャンセル機能を解除することは違法行為であるという法規制がなされた。Winny を問題にするのであれば、著作権法の改正等によって対応すべきなのではないかと思う。

記者:外国でソフト開発者が逮捕された判例はあるのか。
壇弁護士:外国では、ファイル交換ソフトの開発者については判例がない。民事上では適法であるとされた判断もあるぐらいだ。

記者:今後、弁護団としては、否認していく方針か。
壇弁護士:難しいところだ。いませめぎあいの最中だから。細かい方針については、現段階では差し控えさせていただきたいと思う。

記者:一部は認めるということか。
壇弁護士:それも含めて、具体的には答えられない。

記者:弁護団の陣容について教えていただきたい。
壇弁護士:公開しているのは私の名前だけだが、おいおい考えていきたいと思う。HPで公開するなど。